昔々、枕草子にも登場する「ヤマモモ」。
長い間日本の伝統として親しまれてきたヤマモモですが、最近では栽培者も減少し収穫から食べる人も少なくなっているとのこと。
一方で、ヤマモモはどこか懐かしい風味があり、その味わいには根強い人気があります。
香り豊かで甘酸っぱいヤマモモの味わいは爽やかで、まるで本格的な夏が迫っているかのようです。
この熟れたヤマモモの実は鮮やかな色合いをしており、これが原因で身体に悪影響があるのではないかと心配になる方も多いようです。
実際のところヤマモモの実には毒はありませんが、注意点もあります。
ここでは、ヤマモモを食べる際の注意点と、ついた虫の対処法や食べ方について解説します。
ヤマモモの栄養
前述の通り、ヤマモモには毒性はありません。
ヤマモモは、春に赤い花を咲かせその後実を結びます。
ヤマモモ科ヤマモモ属の常緑樹です。
「ヤマモモ」という名前ですが桃とはまったく異なる種類です。
ヤマモモの実は、小ぶりな球形で直径が1.5㎝~2㎝程度で数個ずつまとまって実を結びます。
表面には細かいデコボコがあり、熟すると赤くなり時折ライチのように見えることもあります。
ヤマモモの実は緑から黄、黄から赤、赤から赤黒い色と段階的に変化します。
色の変化とともに酸味から甘みへと味わいも変わります。
最終的に赤黒く熟した実は、良い香りがありラズベリーのように甘酸っぱく、カシスのようにサッパリとした味わいがあります。
酸味があるため、暑い季節にも食べやすくジャムやシロップに加工すれば、夏の栄養源となります。
赤黒い色合いが少し驚かせるかもしれませんが、ヤマモモの実には毒はなく、むしろその小さな実には豊富な栄養素がたくさん詰まっているのです。
代表的な栄養素として挙げられるもの
- ブドウ糖
- クエン酸
- アントシアニン
- ビタミンB
- カリウム
- フラボノール
- 葉酸
などがあります。
特に、ブドウ糖とクエン酸はヤマモモの栄養の中心的な成分です。
ブドウ糖は体のエネルギー源となり、その甘みがさまざまなストレスを和らげてくれます。
脳が疲れたときにはブドウ糖っていいますよね。
一方で、クエン酸は細胞の酸化を抑制し、その酸味が疲労回復に寄与します。
また、熟したヤマモモの実の赤色は「アントシアニン」と呼ばれる色素です。
アントシアニンはポリフェノールの一種で、強力な抗酸化作用があります。
生活習慣病の予防にも寄与したりと非常に有望な栄養素とされています。
ヤマモモは虫に注意が必要
ざっと見ても、ヤマモモは栄養たっぷりの果物であることが分かりますね。
でも、栄養素が豊富であるからこそ虫も寄ってきます。
特に熟れたヤマモモの実は糖度も柔らかさも増し、虫にとって快適な環境となりやすいです。
また、自然生息しているヤマモモは無農薬が一般的なため、虫の発生も増える傾向があります。
ヤマモモの実に付く虫は主に幼虫で、その姿は白い小さな糸くずのようなものが見受けられます。
誤って食べることで食中毒になることはありませんが、それでも気分を害することはあります。
事前にきちんと下処理を行ってから食べるようにしましょう。
他にもアブラムシなどの虫がつく可能性はあるので処理は欠かせません。
ヤマモモの食べ方と虫の処理手順
まずヤマモモから虫を取り除くための下処理方法を詳しく解説いたします。
手順は非常にシンプルです。
- ヤマモモを流水でしっかり洗う
- ボウルに水を入れ、小さじ1~3杯の塩を加える
- 洗ったヤマモモを2に入れ、1~2時間放置する
- ヤマモモをザルに上げ、再び流水でよく洗う
以上が下処理の手順です。
重要なのはヤマモモを「塩水に漬ける」ことです。
塩を加えることで、水中の塩分濃度に耐えられなくなって実の中の虫が外に逃げ出す仕組みとなります。
通常、この塩水の処理で小さな虫を取り除くことができますが、心配な方は4の手順(ザルに上げて水で洗う)の後、よく水分を拭き取り、乾燥しないようにポリ袋などに入れ冷蔵庫で1~2時間冷やしてみましょう。
塩水だけでは対応できなかった虫が、寒さに耐えきれずに外に出てくることがあります。
この2段階の方法で虫を取り除いている方もいますので、虫が苦手な方はぜひ試してみてくださいね。
ヤマモモの食べ方
ヤマモモを食べる一般的な方法は、もちろん生でかじること。
ヤマモモ独自の甘酸っぱい味わいがたまりません。
冷蔵庫で冷やしてから食べると、さらに美味しさが引き立ちますよ。
高知では、生のヤマモモに塩をかけたものをお酒のおつまみとして楽しむ習慣があるそうです。
ヤマモモには中に種があるので、かぶりつくときは注意してください。
もう一つのおすすめは、食べやすく加工すること。
オーソドックスな方法としては、「ジャム」や「シロップ」がおすすめです。
たくさん収穫できるヤマモモの実を利用して、美味しいヤマモモのジャムやヤマモモのシロップを手作りできますよ。
ジャム作りの手順を簡単に紹介します。
まず、ヤマモモのヘタを取り下茹でしてから裏ごしし、その後煮込んでいきます。
ジャム作りでは、種を取り除くための裏ごし作業が必要ですが、この工程をクリアすれば美味しいヤマモモジャムが完成します。
ヤマモモにはペクチンが含まれていないので、ペクチンを足すか、煮汁を濾してシロップを取ったりして、とろみを出すのがポイントです。
そして、レモンも絞りましょう。
ヤマモモのジャムは、レアチーズケーキなどに添えると、見た目も良く、スイーツの味を引き立てる素敵なアクセントになりますよ。
また、ジャム作りの過程でシロップを取り出すこともできます。
梅シロップなどと同じような感じで、果実酒用の瓶にヤマモモと氷砂糖を交互に入れて作っていきます。
シロップが上がり、ヤマモモがすべて上部に浮き出したら完成となります。
シロップ作りに使ったヤマモモはそのまま食べられますよ。
同じ手順で、ホワイトリカーを使えばヤマモモ酒も手作りできます。
ただし、ヤマモモは生のままでは保存が難しいので、収穫後すぐに食べるかジャムなどに加工する必要があります。
まずは生でそのまま食べてヤマモモそのものの味を楽しんでから、保存食に加工すると夏のお楽しみになることでしょう。
新鮮なヤマモモを手に入れたら、ぜひ挑戦してみてくださいね。
ヤマモモの食べ過ぎには注意が必要?
ヤマモモの食べ過ぎに関してですが、ヤマモモは特に毒性がない果物です。
なので、お腹いっぱい食べても特に問題はありません。
ただし、どんな食べ物も過剰な摂取は身体に負担をかける可能性があります。
例えば、ヤマモモの主成分であるブドウ糖は摂取しすぎると肥満を招き、大量に摂ると血糖値が急上昇する可能性があります。
また、クエン酸は過剰摂取しても体外に排出されるものの、短時間の多量摂取は胃腸に負担をかけ、下痢や嘔吐を引き起こす可能性があるとされています。
栄養が多いヤマモモといえども、度を越す食べ方は慎むべきです。
次に、ヤマモモアレルギーについてです。
1980年ごろからヤマモモアレルギーの報告が増えてきています。
ヤマモモに含まれる「フラボノール」という成分は強力な抗酸化作用があり、免疫強化や抗アレルギー・抗炎症作用に寄与します。
つまり、ヤマモモの実はアレルギー症状を和らげる働きがあるのです。
でも、一定の量以上を摂取したり、その日の体調によるなどいくつかの要因が組み合わさることで、ヤマモモの実がアレルゲンとなる可能性があることが確認されています。
もし、ヤマモモを食べた後に…
- 皮膚のかゆみや赤み
- 口腔内のただれ
- 鼻やのどがイガイガする
などの症状が現れた場合、ヤマモモアレルギーの可能性が考えられます。
水分を摂ることで悪影響の排出が促されるかもしれませんが、何か異変を感じたら自己判断せず、迅速に医療機関を受診するようお勧めします。
まとめ
ヤマモモに毒はあるのかどうかと、下処理のやり方や食べ方について解説しました。
ヤマモモは、一部の人には馴染みの薄い果物で、食べても良いのかどうか不安を感じることがあるかもしれません。
熟した実の色が強烈なので、ますます心配になることもあるかもしれませんが毒性はないので安心してください。
ただし、ヤマモモには虫がつく可能性があります。
でも、適切な下処理をすることで安心して食べられるようになります。